東京造形大学
空気帳
後藤 紗希 / デザイン学科室内建築専攻領域
建築物の外から中にいる人を知ろうとするとき、厚く固い壁に阻まれ、本人にたどり着くまであまりに大きな距離があるように思う。身体に最も近い空間の層は衣服であると考え、建築物も衣服も外界からプライベートを守るためのシェルター(帳)になっている。蚊の帳(とばり)である蚊帳素材は、個人を外界から遮断するという点に共通点を見出し、しかし同時に気配や声は透すという点に面白さを感じ、素材として使用した。一つ一つの境目を極限まで薄く柔らかく透ける布にし、外界に個人の気配や声を透すことから生まれる繋がりもあるのではないか。3層の入れ子状の帳の中心には、身体にとっての空間の最小単位である衣服が存在し、その中には絶対的なプライベートが潜む。建築物から空間、衣服までの境目である帳をくぐり抜け、人と人との間を繋げることのできる空気のような帳を制作した。