卒展レポート

金沢美術工芸大学

第61回 美術工芸学部卒業制作展

toku 心地よい音色で生活の大切な時間を知らせてくれるベル

本山 貴大
美術工芸学部デザイン科 製品デザイン専攻

日本の工芸品の生産額は、ライフスタイルの変化などにより減少の一途を辿っている。私は、現代の生活を彩る新たなプロダクトとして工芸品を提案することで、多くの人が工芸の技術や素材に興味を持つきっかけをつくり、工芸の美しい営みを未来につなげたいと思った。銅器工芸が盛んな富山県の高田製作所の全面協力のもと、仏具や寺の鐘にも活用されている真鍮鋳物の「鳴り」に着目し、新たな工芸製品を提案する。「toku」は、設定した時刻に鐘を鳴らし、目覚めの時間やおやつの時間、読書の時間といったユーザーが大切にしている時間を促してくれる。また真鍮鋳物特有の涼し気な音色で、気持ちもリラックスさせてくれる。鐘は、サイズ、素材、形状、厚みなどをよく検討し、心地よく澄んだ伸びる音鳴りに仕上げた。また素地をそのまま使うことで、真鍮の経年の変化をより身近に楽しめるようになっている。パッケージも「鋳物のストーリーを伝える」というコンセプトのもと、鋳型をモチーフにデザインした。

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