詩を読むことが昔から好きだった。悲しいことがあったときも、なんとなく心がざわついているときも、共感できる言葉、響きが心地いい言葉に出会うと励まされるような気持ちになったものだ。日々生活していると、どうしようもない遣る瀬なさを感じるときがある。私のものづくりは、そういった「せつない」気持ちに寄り添うことだ。デザインは「問題解決」をするためのものという人も多いが、本当にそれだけだろうか。ただ「わかるよ」と言ってくれるような存在があるだけで、救われることがある。
私自身の思い出や日々思うことから着想を得た２０編の詩をグラフィックとあわせて収録し、私家版の詩集とした。詩の執筆から製本までの全工程を私自身で行い、それぞれのページにはシルクスクリーン印刷を施している。工芸品のような一点ものではなく、少部数生産だからこそ表現できる、ちょうどいいぬくもりをもつ本を目指した。この詩集が、読んだ人の心に寄り添う存在になることを願っている。