金沢美術工芸大学
森へのこみち -石川県立図書館を人々の創造の場へ-
奥村知恵 / 美術工芸学部 デザイン科 環境デザイン専攻
学びとしての行為として、読書は幼少期より蓄積される事で個人の世界観や知識を形成する要素の一つでもあるが、近年のインターネット技術の発達等により読書を行う人が減少している。空間を介さずネットを介して様々な行為が行われるようになった情報化社会の現代において、その土地にしかないもの、実在するものを見つめ直し豊かな学びの場である図書館を提案する。
石川県内一の蔵書数と貴重な特殊文庫を保持しているのが石川県立図書館である。金沢21世紀美術館近くの好立地にあるが金沢市民の認知度は低く利用者もあまりいない。加賀前田藩は能楽伝統工芸や古典等を多く収集したがその貴重な資料の多くが尊経閣文庫として東京に保管されておりその他の特殊文庫は県立図書館で人の目を浴びず暗い書庫に所蔵されている。本に対して、土地に対して図書館が閉じてしまうことで広坂界隈は大きく分断され利用者も寄り付かない。土地と建築が密接に関わり合うことで、固有の風土と人を繋げ唯一の体験を生み出すという一つの仮説を立てる。分断された広坂・本多町界隈に風を通す「芸術のみち」となる図書館を設計する。東京にある尊経閣文庫を県立図書館に誘致しギャラリー公開し人々にこの土地にしかない深い学びと新たな創造の場を提供する。