金沢美術工芸大学
万葉のひかり
吉村知代 / 美術工芸学部 デザイン科 視覚デザイン専攻
これは、空間を使って和歌を読むための装置である。
和歌がスクリーン上に浮かんでは消え、読めたり読めなかったりすることで観測者に和歌の情景を感じてもらうことが目的である。
作品に用いた和歌は万葉集から抜粋している。日本最古の和歌集である万葉集には、下位級から貴族まで様々な人々の和歌が収められており、歌人の必死やむを得ざる自己の衝迫に根ざして詠われたことが、純粋で自由な作風から読み取れる。現代の日本人は、諸外国の人々に比べ本心を表に出さないと言われているが、古代の日本人は万葉集に描かれている歌を読んでわかるように、自分の気持ちを素直に歌の調べにのせて表現することができた。万葉の人々が感じていた情景を、現代人に読んでもらうことで、時には素直に感情を表現する心地よさに気付いて欲しいと思いこれを制作した。また、和歌の表現には日本独自の文字であるひらがなを使い、ひらがなの持つ美しさも同時に感じられるようにした。