武蔵野美術大学
はさみのじかん
湯浅 由伎子 / デザイン情報学科
もしあなたが自分の子どもに「はさみ」を与えるとしたら、何を基準に選びますか?
最近では「子ども用」として、子どもに合わせてあらゆる工夫を施したはさみが多く販売されています。それらの多くは「安全性」を売りにしています。その「安全」という言葉、安易に鵜呑みしていませんか?
私は、子ども用製品の「安全性」は、購入者である保護者へのアピールだと考えています。
これらは「目先の安全性」に過ぎないのです。安全にはさみを使えることにより確かに怪我は軽減するかもしれませんが、はさみというものは本来とても危険なものです。間違った使い方をしないよう、緊張感を持って使うべきなのです。また、切れ味がよくないものを使用することにより、本来切れないものを無理に力を入れて切ろうとしてかえって危険になることもあります。長期的な目線で見ると、逆に危なっかしいくらいのものの方が道具の危険さが伝わるのではないでしょうか。
その「安全性」は果たして本当に安全なのか、それでは自分が考える「安全」とは?
この本は、「子どものためのデザイン」を保護者自身が見極め、子どもの個性に合いながら、道具としての力を発揮することができる製品を保護者が選び与えられるようになる考え方・物の見方を磨くための本です。