武蔵野美術大学
Typeface of 1min.
高室 湧人 / 基礎デザイン学科
時間とは、ものの変化を観察することから得られる抽象である。言い換えれば、常に起こる変化から演繹されて生まれた数学であり、法則である。時間の単位は、世紀、年、月、週、日、時、分、秒などがあり、それは私達が生きて実感する事のできない壮大なスケールのものから、儚い一瞬の出来事まで、様々な変化を捉える尺度がある。私はこの時間の中でも特に身近な"1分間"という尺度がいったいどのようなものなのか、研究する事を試みた。
1分間とは何か。私達はそれを砂が落ちて溜まる堆積量の変化や、60回角度を変えながら一周する針の運動などで表現し、理解してきた。この1分間の表象とも言える" 動きの変化" を、時針や秒針に変わる新たな表現に転移させる事で、1分間を新鮮に捉え直す事ができないかと考えた。
私は時間の新たな表象として"文字" に着目した。文字は本来、言葉を伝達する為の道具であり、時間を測定する装置ではない。しかし、私はあえて時間という尺度を持たない"文字"つまり"言葉"を時計の針と見立てる事で、パラドキシカルな「1分間」を表現する事ができないかと考えたのだ。
一連の表現は文字を用いた「1分間」の暗喩であり、詩である。