武蔵野美術大学
私があなたにキスをする、生温かで優しい血の流れを感じながら
藤浪 美世 / 油絵学科 油絵専攻
たぶん今わたしがこの場所にいるのは、あなたという引力によって導かれたからなんだと思う。いつからかそう思うようになった。元気ですか?私は元気です。あなたに送る手紙を書くとき、いつも私は元気でいたい。
中学生の頃に国語の先生から聞いた話で、ある民族ではキスは神聖視されていて、相手と魂と魂が解け合うと考えられているらしい。14歳の頃の記憶として印象強く残っている。ずっとその話だけは覚えていた。
あなたはもう、私の心の中に深く刻み込まれて、自分の一部になってしまったように感じる。今描いている絵の中にも、あなたの気配は存在して、私に力を与えている。
見えている世界を美しく感じる。あなたと共有できたらどんなに幸せだろう。
そうだ。そう話をした。私は幸福を感じた。あなたはどう?
以前話した、あの大窓に鳥が空と間違えてぶつかるのを、私はまだ見た事がないままでいる。