金沢美術工芸大学
Air creature
吉澤 あずさ / 美術工芸学部 デザイン科 視覚デザイン専攻
幼い頃、祖母はこんなことを言いました。「ここは昔、海の底だったんだよ。」その言葉を聞いて私はとても驚きました。なぜなら私が育ったその場所は海などない山の中だったからです。幼い私はとても変な気分になって、自分も海の中でゆらゆらしているような気分になりました。長い長い時間によって分たれた遠い昔の海の景色と、今ある山の景色が重なって見えたのです。そうして見上げた空には、大昔から生きている誰にも捕まえられない奇妙な生き物が泳いでいる気がしました。きっと彼は、海が山に変わるほどの果てしなく長い時間を泳いで旅してきたのに違いありません。この作品は、そんな想像の中に生きるものの姿を形にしました。けれども、私ですら彼の本当の姿を捕まえることはできないのかもしれません。だからこそ想像することは魅力的なのだと思います。そんな意味も込めてAir(空の、想像の)creature(怪物)というタイトルを付けました。全長およそ5.5m。ラジコンで足が動かせる仕様となっており、ヘリウムガスを充塡しているため実際に空に浮きます。