金沢美術工芸大学の卒業・修了制作展が、今年も金沢21世紀美術館を会場に開催された。会場のレイアウトは学生主体で行い、それぞれの作品が効果的に演出されていた。

デザイン科の各専攻では教育方針に沿った多様なテーマ設定や表現が求められるが、数度の学内審査でそれらが研ぎすまされ、提案性の高いものに仕上がっていく。特に現代社会や時代性を意識したコミュニケーション・製品・空間に対する新しい価値の創造を目指した、チャレンジ精神溢れる作品が多く見受けられた。展示は専攻ごとに緻密に計画され、作品をジャンルごとにまとめたり、使用方法を説明するムービー、ライティング効果など来場者に伝える工夫が感じられた。

学生のギャラリートークツアーや外部審査員による特別賞の選考も実施され、活気に満ちた展覧会となっていた。また、会期最終日の3月1日に挙行された金沢美術工芸大学での卒業・修了式に合わせて、全国から保護者や関係者も多く来場していた。

【各学科からのメッセージ】

ファッションデザインコース　大学院3名
細部までこだわり抜いたパターン設計、風合い良く豊かな表情のテキスタイル、草木のぬくもりが伝わる優しい色遣い。女性らしい優しさと強さを併せ持つブランドが揃った今年の修了制作では、「上質」であることを追求しモノ作りの根本を問い直す姿勢が各所に見られました。研究過程で業界の方々から学ぶ機会に恵まれ、店舗デザイン等他専攻との共同制作も定番化し、繋がりから生まれるクオリティの高さが魅力的な作品となりました。

視覚デザイン　学部18名　大学院2名
視覚デザインのブースに入ると、見る人の顔がさっと変わることがわかります。ある人は笑顔になり、ある人は隣の人に話しかけ、ある人は、腕を組み何やら難しい顔になり、ある人は大声で笑い出す。その顔を見ているだけでも楽しくなってきます。もちろん、作品も百花繚乱、どれひとつ同じ顔を見せず、強力オーラを放つ作品の揃い踏みだ。時代を反映してか、3．11の震災を「時間」という観念でとらえた作品もあれば、「可愛い」という言葉から、女の子のパワーを表現している作品もあれば、エンターテイメントあふれるゲームや映像の世界でヒトの心を刺激した作品もあれば・・・・すみません、まず見てください。いろんな顔をして感じてください。あるいは、いっしょに踊ってください。ウエルカム！コミュニケーションデザインワンダーランドへ！！

製品デザイン　学部20名、大学院2名
製品デザインにおける卒業制作の魅力は、提案内容の充実とともにそれが反映した密度の濃いモデルを完成させることにあります。今年度はディテールからカラーリングそして素材選定まで納得のいくデザインがそろいました。それぞれのモデルはユーザーの現場で検証をおこない改良を重ねたもので、裏付けのある作品となっています。マーケットのリアリティーとデザインのリアリティーへ向けて妥協の無い探究が一人一人の学生によってなされました。

環境デザイン　学部16名、大学院3名
環境デザインは、建築やランドスケープの専門的な知識や技術を基礎に、さまざまな空間デザイン領域に挑戦している。都市環境や自然環境をテーマに、時代性を反映した提案を行った。東日本大震災を受け、これからの新しい人とモノの関係性をデザインした特色豊かな提案が多くみられた。地域の復興を目的としたワークショップやローカル線の廃線を生かした休憩施設、仮設住宅の新しい提案など、近い未来を見据えた多彩な作品が揃った。