武蔵野美術大学
我々はどこから来たか
我々は何者か
我々はどこへ行くのか
坂爪康太郎 / 工芸工業デザイン学科 陶磁専攻
仮面とは、何ももたず、何も知らず、それでも生きるために信仰と創造が発展した時代の人々が生んだ「未知の恐怖、思いや願い、目には見えない力を具現化する」という能力を持った道具である。
目には見えないものを信じる力。存在しないものをつくりだす力。抗いがたい自然を征服してしまうのではなく、それと寄り添うようにして生きる力。それらが失われ、道具としての仮面の存在意義が消えた現代で、わたしはこのような力を直感的に感じ取れる装置としての価値を仮面に与えたい。だからそれ以外の目的を排したオブジェという媒体で制作した。これを見る人に、古代人が感じたであろう人と自然の繋がりの中で生まれる根源的な感情、未知への恐怖や自然の創造力への憧れを感じとってもらいたい。それは人類が文明の発展と引き換えに置いてきてしまったひとつの人間らしさだから。