武蔵野美術大学
Fall into decay(フォール・イントゥー・ディケイ)
清水綾子 / 大学院金工コース
私は以前からドローイングを描き、そこで出て来た独自のイメージを元に金属を鋳造する事で自分が理想とする立体作品を造ってきました。
しかし今回の作品はドローイングを描いてから立体作品に着手するという過程は同じですが、大学院進学以前より「ばり」に対する自分の感覚というものが大きなテーマとなっているという点で違いがあります。
「ばり」というものは鋳造を行う際、型の不良箇所に亀裂が入り、そのまま金属を充填してしまうと作品本体に出来てしまう余分な部分の事で、「ばり」が付いて来てしまった物は品物本来の形を損なうという理由から一般的には「不良品」「欠陥品」「廃棄物」として忌み嫌われます。
私は以前からこの「ばり」の持つ表情を奇妙で複雑で面白いと考えていました。
型の外部からは分からない亀裂―空間が溶けた金属によって形を持ち、独特の表情をもつ立体となって生まれ出る事に非常に興味を持ち、またそのテクスチャーと形は私の描くドローイングにどこか通じるものを感じました。
そこで今まで行った鋳造によるデータを元に意図的にかつ自然に型に亀裂を持たせ、「ばり」そのものを鋳造しようと試みたのが今回の作品となっています。
この作品を通じて作品の独特な表情や形、雰囲気を味わって頂き、同時に「欠陥品」といわれる「ばり」に従来とは違う見方を持って頂けたらと考えています。