なぜ私は目の前にある広大な風景を目の当たりにした時、その悠然たる光景に心奪われ、画面と格闘しながらも新たなる次元の場へと突き進もうとするのか。その答えを知りたくて、今回私は大学アトリエ三階から眺望できる風景をもとに、作品作りを行いました。
制作をしていく中で私が常に意識していることは、〝ひとつの絵〟を作り上げるということ。
現実のモチーフを利用しつつ、私自身の内にあるフィルターを通して、画面上に吐き出すということ。
現実にある風景をそのまま画面上に描き写すということは、不可能なことであり(そもそも三次元の世界をあたかも二次元に写すのですから……)、それを踏まえた上で具体的に言いますと、質の違う二つの要素(マチエール、流動的な筆跡を重視した部分と、色面、パースで捉える部分)を画面上に同時に存在させることによって、なにか異質な〝変な奥行きのある絵〟を生み出すことを試みてみました。
時として、絵画あるいは美術そのものが現実の世界よりもリアルに感じる瞬間というものが存在する時があります。その作品の持っているリアリティーが立ち上がった瞬間です。これが絵画(美術作品)の最大の魅力だと私は思っています。その魅力を最大限に引き出すためには、小手先の技術だけでなく、日々の物事に対する考え方や作品に取り組む姿勢というものが重要になってくるのではないでしょうか。少なからず私はそう思っています。
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