東京は歴史の長い日本の大都市であるが、二十三区を外れれば全く開発されたばかりの土地もある。私は西側のニュータウンから都心部へと移動をしながら撮影を続け、それらの写真を羅列することで、時代と町の変化がグラデーションのように見えるのではないかと今回の展示を行った。
新しい場所である程、均質的な、同じような風景が続く。ど こまでも個人住宅が続き、店も自営業で経営しているところは殆どなく、どこもチェーンストアばかりである。しかし、それだけ見て単純に貧 しい町だと言うことはできないだろう。実際、食料や生活必需品は全て近辺に揃っているし、今は注文をすれば、殆どのものは自宅に取り寄せ られるようになった。特定の場所に愛着を持たない人にとっては、どこに居ても同じような生活ができるから、安全の問題やノイズの少なさか らこういった場所を選ぶのだろう。
古い場所は逆に、個人の商店や畑、工場などが町と一体と なって存在し、町と人の関係が自然に繋がるような環境である。このような場所には、住人それぞれが愛着を持って住んでいるではないだろう か。しかし、大きな資本による再開発や建物の耐震強度の問題による建て壊しなどで、そういった場所もなくなろうとしている。
そうした状況の中で町の特徴を維持するものは、人の思い入れだけなのではないだろうか。人々の特定 の思い入れがある場所に集まった結果、それがその町の文化となり、町を色づける。例えば若者であったら先鋭的なサブカルチャーであり、年配の 方であったら古書や骨董品などの古い文化の保持である。そういう形でしか、合理的な決定によって一様に変質する町に、固有性をもたせられない のかもしれない。
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