愛知淑徳大学
かわりゆくせんいのまち ―From FiberCity To Diversity―
稲見 有加里 / メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース
まちは移り変わるもの。
昔はよかったと言う声がある。そのまちの起源となった風景は価値あるものだ。反対に、今の方が便利でいいという声もある。例えば緑が失われ、人が減り、まちの起源が失われてしまっても、現象的に美しく、便利なまちになっていることもある。そうして変化してしまった風景を批判し、全く新しいものに作り替えてしまうことはあまり現実的ではない。今ある風景を肯定し、その上で新たなまちの起源の再発を企むまちづくりを提案したい。そんな思いを込めて制作した絵本である。
なぜ絵本なのか?絵本は子どものものではないのか?
まちの移り変わりを描いた絵本は意外にもたくさんある。ページをめくるごとに時が流れ、まちの風景が変化していく。ただ流れていくアニメーションとは違い、じっくりと見ることで些細な変化に気付き、様々な解釈をする事ができる。堅苦しい写真とも違いやわらかい絵はどんな年齢の人にもわかりやすく変化を伝えることができ、人々がまちの変化に関心を持つきっかけになる。私もまちづくりに興味を持ったのはこうしたまちの移り変わりを描いた絵本を見たからだ。
絵本の舞台は名古屋市中区錦二丁目「長者町」。繊維街として繁栄した過去、バブル崩壊後産業の衰退、人口の減少によりシャッター街と化したまちだ。アートやグルメ、木質化、生物との関わりなど新たなまちの価値を見つけ、住民らが掲げたまちづくり構想を参考にしながらまちの移り変わりを描いた。