愛知淑徳大学
Slum clearance ~住んで働く集合住宅~
杉本 桜華 / メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース
「貧困」という議題について深く考えたことはあるだろうか。けして他人事ではないこの問題に建築からアプローチしてみようと思い、カンボジアの首都プノンペンに貧困層の人々のための「住んで働く集合住宅」を提案する。2回に渡り現地視察し、スラム地域の調査を行った。急速に発展する都市部では、NGO団体による支援・ビジネスが多くみられ、貧困層の生活を直接的に支えていた。富裕層向けの建物とスラム地域の共存する風景からは国民の貧富の差の広がりが強く感じられた。貧困層の人々の教育不足による生活の悪循環、繰り返されるスラム地区の強制立ち退き運動・・・このような現状を踏まえ、都市における環境改善と貧困緩和のクロスポイントとなる施設を計画する。対象敷地はあるひとつの荒廃したスラムアパートである。貧困の脱出に必要なものは「教育」「居住」「職」のバランスを安定させることにあり、この3つの要素を兼ね備えた集合住宅に造りかえる。外資系商業施設等では手に入らない様な手造りの土産物を住民が制作販売し、またそこでの生活は観光客に開放する。交流の場としての役割ももたせ、新たな観光名所としての集客性も生まれる。また、居住空間の隙間を住民の生活が彩ることで、そこにしかない景色が生まれる。開発のために貧困層の人々を都市から追い出すのではなく、彼らを都市とともに成長させていけるようなしくみが存在してもいいのではないだろうか。