日常の何の変哲もない物事からふとした瞬間に感じた特異性と自らの経験している日常生活での出来事を結びつけ、互いが『今』という時間、同時に歩む空間を共有していく、常に新鮮で生きた絵画を私は制作しています。今回の油彩作品『シトの旅』は、旅行にいった先で出会った、いくつかの情景を聖書の【使徒行伝】という話と照らし合わせて、描いています。内容は、主に使わされて旅をする弟子たちが様々な苦難に会い、時には命を落としそうな危ない目にあっても、決して諦めず、最後には無事に旅を終える。というお話です。
『シトの旅』は、私のこれまでの苦難の多い人生の歩みを反映させた作品です。また今回TETSUSON 2011展示の期間中に起こり、自らも体験した東北関東日本大震災によって、この作品が希望のメッセージを持つものになるのではないかと思いました。そして、いまだ困難の中にあり、先の見えない状況の中でも最後には必ず明るい未来が待っているということを、被災者や困窮している方々、また、『今』を生きる多くの人々の励みになればと思っています。最後に、『シトの旅』に用いた聖書の【使徒行伝】から私が励まされた箇所を紹介します。
「元気を出しなさい。舟が失われるだけで、生命を失うものは、ひとりもいないであろう。」
(船旅の最中に嵐にあい、誰もが恐れ不安に怯える中、一人の使徒が語った言葉です)
|