ものを作り上げるとき、ぎりぎりの線を探して極限まで突き詰めていくことは至難の技だ。それ以上進むと一気に崩れて目も当てられなくなるが、危なっかしさゆえにその境界線は魅力的で美しい。この線を模索していく事が喜びである。
「化粧」は顔に施す仮面のようなものかもしれない。しかしながら、この作品の人物たちは仮の面ではなく華の面を装っている。染付の蛸唐草と網目文様を化粧として捉えると、貫入も肌に入れたくなった。続いて蒔絵の化粧。漆の艶と蒔絵の金や銀の輝きは、暗闇の中でこそ生きてくる。さらに朱金地の紅を引いた。最後に盆石。盆石とは漆黒の盆上に石を配置し白砂を降り、山水等を描くものであるが、ここでは海の波はまるでたなびく髪のように、そして川は静かに音楽を奏で出す。
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