増加する高齢者とその家族、高齢者同士のコミュニケーションを促し、心と体の健康面を補う手段として「楽器」という切り口があると考えた。その中でも『マリンバ』という楽器は、心地よい音色を「叩く」というプリミティブな動作で生み出す。幅広い年齢層が気軽にでき、そのハードルの低さと心地よい音色が高齢者に適していると考えた。そこで高齢者のための新しい価値を持ったマリンバを提案する。従来のマリンバのように立位のみの演奏だけでなく、体の負担を減らし気 軽に演奏できるように、座位での演奏を可能にする機構を取り入れた。座位でも叩きやすいように音板の傾きを変えることができ、３オクターブの音域の幅を演奏できるような音板と共鳴部を備えている。また自宅や老人ホームなどに適したインテリア性とコンパクト性を兼ね備えたデザインである。この楽器を通して高齢者の豊かなストーリーが生まれることを期待する。