卒展レポート

金沢美術工芸大学

金沢美術工芸大学 第59回 美術工芸学部卒業制作展/第36回 大学院修士課程修了制作展

  • 金沢美術工芸大学  第59回 美術工芸学部卒業制作展/第36回 大学院修士課程修了制作展
  • 金沢美術工芸大学  第59回 美術工芸学部卒業制作展/第36回 大学院修士課程修了制作展
  • 金沢美術工芸大学  第59回 美術工芸学部卒業制作展/第36回 大学院修士課程修了制作展
  • 金沢美術工芸大学  第59回 美術工芸学部卒業制作展/第36回 大学院修士課程修了制作展

本年も金沢美術工芸大学の卒業・修了制作展が、金沢21世紀美術館を会場に開催されました。会場レイアウトは学生主体でデザインし、それぞれの作品が効果的に演出されていました。修了制作展ではファッションデザインコースが環境デザイ […]

本年も金沢美術工芸大学の卒業・修了制作展が、金沢21世紀美術館を会場に開催されました。会場レイアウトは学生主体でデザインし、それぞれの作品が効果的に演出されていました。修了制作展ではファッションデザインコースが環境デザイン専攻の学部2年生とコラボレーションし、什器デザインをはじめ展示空間をデザインするユニークな試みがなされています。卒業制作展はデザイン科の各専攻の教育方針に沿った多様なテーマ設定や表現が求められます。夏からスタートする制作は、幾度かの学内審査でコンセプトやデザインが研ぎすまされ、提案性の高いものに仕上がっていきます。特に現代社会や時代性を意識したコミュニケーション・製品・空間に対する新しい価値の創造を目指した、チャレンジ精神溢れる作品が多く見受けられました。展示は専攻ごとに緻密に計画され、作品をジャンルごとにまとめたり、使用方法を説明するムービー、ライティング効果など来場者に伝える工夫が感じられました。学生のギャラリートークツアーや外部審査員による特別賞の選考も実施され、活気に満ちた展覧会となっていました。

●環境デザイン 学部20名 大学院0名
環境デザイン専攻は空間に関わる専門的な知識や技術を基礎に、広い領域を横断したホリスティックなデザイン分野として社会に関わるべく、各自が様々なデザインよる課題解決にチャレンジしています。本年も現代社会への提案から近未来を見据えたものまで幅広く魅力的な作品が揃いました。表現方法もスケールモデルやリアルモデルの枠にとどまらず、実際に体感できる空間装置やディスプレイからマテリアル研究の成果まで多種多様です。展示方法も専攻としてのこだわりを発揮し、カテゴリー毎のレイアウトと個々の作品概要を示す統一パネル、専攻全体の活動を紹介するスライドプロジェクションなど昨年よりも一歩前進した表現がなされました。意義ある提案も、先ずは目を留めて見てもらうことが重要との視点から、伝えることにこだわった展示空間を目指しました。会期中は多くの来場者に環境デザイン専攻の領域の広さと深さをご理解いただけたと思います。約半年間の卒業制作は現時点での評価に関わらず、そのプロセス全体が長いデザイナー人生の出発点として貴重な経験になるはずです。

●製品デザイン 学部18名 大学院2名
今年度のテーマは「超高齢社会」です。日本は世界に先駆けて超高齢社会を迎え、私たちは他のどの国も経験していない様々な未解決の問題に直面しています。その中で、デザインはどのように夢のある社会を実現することが出来るでしょうか。ここに提示された一つ一つのデザインは、学生たちが調査によって見出した、これから起こりうる様々な社会の課題に対するポジティブで快活な解答です。実験モデルを幾度も作り直し、現場での検証を重ねた実働モデルを提示する者もいれば、調査の中から導き出された推論を基に提案を行う者もいます。いずれも学内の工房で、学生自らの手でリアリティのあるデザインモデルとして制作したものです。この経験は、これからデザイナーとして社会に出ていく彼らにとって、リアルな手の感触として未来のデザインに価値ある影響を与えてくれるでしょう。会場では提案をわかりやすく伝えるために、提案の背景や使われ方などに触れた映像によるプレゼンテーションが行われ、多くの方々が足を止め、それぞれの作品を楽しんでいかれました。

●視覚デザイン 学部23名 大学院2名
今回は例年に比べ、ポップでカラフルな作品が目立ちました。また映像を含む作品が25点中9点も出揃い、本専攻の特色でもある立体系の作品は全体の半数に及びます。レーザー加工なども活用しておりますが、年を追うごとに素材としての生々しさは消え、表現の一部として巧みに使いこなせているようにも感じられます。また、いわゆる視覚デザインの範疇に収まらない作品が多いのも専攻の特色です。これは個々が考え抜いた独自のアイデアを元に、既成概念にとらわれない表現を目指した結果といえるでしょう。一人ひとりが独自に発見した切り口で、問題解決や提案に落とし込むことがここでは求められます。テーマが与えられないことの厳しさと、表現者としての覚悟を、明るい作品の裏側に感じ取っていただければ幸いです。

●ファッションデザインコース 大学院5名
ファッションデザイン(FD)コース修了制作の特徴は、ブランド構築(自身のブランドを立ち上げる)を想定して市場調査を行い、多角的視野でターゲットを絞り込み制作する点です。さらに、発表形態をブランド哲学を伝える空間全体として表現します。これは、同大学環境デザイン(IAD)学部2年生との共同授業を行う事で実現させています。クライアント(FD修士2年)と依頼を請け負うデザイナー(IAD学部2年)といった関係性のもと、各々の意向を伝えた上でそれらの空間演出や什器のデザイン・設計・設置までを実際に行なっています。今年度は、多種多様な5名の作品が並び、見応えのあるものとなりました。0からファッションを学び、マーケティング・ブランディング・ディレクティングまで果敢に取り組んだ2年間の成果がここに集約されました。

会期 2016/2/17(水)~3/1(火)
時間 10:00~18:00
会場 金沢21世紀美術館 市民ギャラリー 他
石川県金沢市広坂1丁目2番1号
URL http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/

作品一覧