岡山県立大学
電子絵巻 ―枕草子 第七段「上に候ふ御猫は」―
山﨑 曜 / デザイン学部 造形デザイン学科 ITコンテンツデザインコース
日本の誇るべき文化の一つである「絵巻物」を、iPadアプリケーションという現代に適合した新しい形態で制作した。作品の媒体としてタブレットPCを選んだのは、横スクロールによる鑑賞が絵巻物を楽しむ方法と同じであること、そして絵巻物が淘汰されてしまった要因である鑑賞、保存、複製の欠点が容易に克服できることが理由である。
「絵巻アプリ」としての制作を行う上で、題材には枕草子の第七段、「上に候ふ御猫は」を取り上げた。本作品では装飾的で華やかな色彩を持つ「王朝絵巻」の作風と、「説話絵巻」などに用いられた連続画面によるストーリー展開を活用し、両手法の融合を試みている。
絵巻物の特色である「吹抜屋台」「異時同図法」「モノによる場面転換」「マンガ的表現(声の可視化・汗など)をそのまま表現に取り入れたうえに、登場人物にタッチすることによりそれぞれが動き出す仕組みを作成。さらに、登場人物名や詞書の表示を切り替える機能、任意の場面に移動できる機能等を付加し、インタラクティブ性をもった「絵巻アプリ」は、現代における絵巻物として新しいジャンルを成立し得る、大きな可能性を持つことを明らかにした。