岡山県立大学
matomo ~その土地の持つ風を有効に利用するための機能を持った「かたち」~
又賀 晴紀 / デザイン学部 デザイン工学科 建築デザインコース
現在の社会では空調をエアコンに頼ることが多くなり、建築内部に自然の風を入れることが少なくなった。そこで、風などの自然の作用とその原理を建築に用いて、風を有効に利用する機能とその機能を持たせるための新しい「かたち」を持った建築を作ることを目指した。今回の作品は一見すると3次元曲面形状を追求したものに見えるが、自然の風の流れを利用してエアコンだけに頼らず空調を行うという、「機能」を実現する「目的」から生まれた。風を的確に取り込み、それを季節に応じて欲しい効果を望む「かたち」を追求した結果が、この流れる曲線で構成された「かたち」になったのである。
これらを実現する方法として、空力学と気流を扱うプログラムParticleを使って風を取り込むのに最適なかたちを見出し、自然を師とするバイオミメティクスの考え方で風を利用する機能を持たせた。今回の作品、研究でのバイオミメティクスは、生き物の形態を真似る、生き物が物を作るプロセスを真似る、自然の生態系システム全体を真似るといった定義で使われる。例えば、500系新幹線はトンネル突入時の衝撃を和らげたり、騒音を減らしたりするためにカワセミのくちばしの形状をデザインに取り入れている。
そして3Dプリンターで作った模型は実際に風を流し、気流を起こすことが可能である。この設計方法では、地域特有の風の吹き方で場所によって一つとして同じ形態をもつものは生まれないだろう。