岡山県立大学
「記憶の層」
眞嶋 青 / デザイン学研究科 造形デザイン学専攻 セラミックデザイン領域
「アート=art」はラテン語のarsに対応し、これに相当するのは「技術」を意味するギリシア語の「テクネ=techne」である。表現と技術には密接な関係があり、技術の進化は今まで見ることのできなかったものを私たちに見せ、新しい表現を可能にする。
本作「記憶の層」は白い部分が磁器、土のような部分が陶器でできている。磁器は冷たく硬い質感、ほんの僅かな透光性を持つ。視線をぼんやりと内側に誘う「白」には他の素材には無い恒久性がある。陶器の部分は自然の土のような質感と荒々しい表情を持ち、長い時間の変化を感じさせ、その2つの間はグラデーションで緩やかに変化している。
本作は、陶磁器のための新しい手法の発想から生まれた作品である。磁器と陶器という性質の異なる素材を繋ぐために、それらを混ぜ合わせた中間の粘土をいくつも作り、一つずつ重ねてグラデーションを作る手法を開発した。土の層からなるグラデーションは異なる素材を繋ぐ機能的な役割を果たすとともに、一方からもう一方へ変容していく姿を見せる。対照的な時間のイメージの素材が混ざり合い、積み重なり、一つの形態を作ることで複数の時間を同時に見せるような表現を可能にした。