武蔵野美術大学
褚遂良仮名 石刻における文字表現
本多 育実 / 視覚伝達デザイン
筆文字は美しい。私は中国書作品に合う仮名のデザインを卒業制作のテーマとしました。文字は長い歴史の中でその姿を様々に変化させてきました。骨、青銅器、石、紙、文字を記す道具や素材は字形や線質に影響を与えます。現在私たちがお手本にする古い書の作品は拓本がほとんどです。しかし、手本とするその文字も書家の筆から彫刻家の鑿、拓本という流れの中で何かしらの変化があったのではないでしょうか。そのため書の字形や筆法をまねるだけでなく、同じ媒体で仮名を表現してこそ、その書をより深く理解したうえでの表現ができるのではないかと思いました。今回題材にした楷書千字文は石刻作品であり、拓本の状態で目にすることが出来ます。そこで、デザインした文字を石に刻すことを試みました。また制作過程をまとめるにあたり、鉛活字や木活字、樹脂板など古今の様々な印刷技法を取り入れて冊子を制作しました。