卒展レポート

武蔵野美術大学

令和元年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作展

  • 現代における寄物陳思
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現代における寄物陳思

今村朝子
芸術文化学科

水引の結びはただの願掛けでなく。“想い”と“思い”を乗せて未来へ続く
思いを指にのせ、結び現れる水引細工。人の想いの過去未来
人を思う気持ちに時代はなく。未来へともに歩む水引細工

水引というものについて、どれくらい知っていますか。ご祝儀袋についているところをよく見かけるのではないでしょうか。

伝統文化には、“作法”と“いわれ”がつきもので、マナーブックでは水引の正解不正解が書かれています。上むきとか、下向きとか。

しかし、水引は本来古くから日本に伝わる、かたちに思いをのせるモノです。

私は、水引に関わる方々から直接話を伺い、結ばれていくところをこの目で見ることで作法に対する考えが変わっていきました。文化の成り立ちから発祥を知り、作り手から今に伝わる想いを聞く。この一連の流れを通して、形骸化された縛りとして認識していた作法が、実感を持った一つの儀式として心に刻まれたのです。

結ぶ人たちの大切にしている“想い”が込められている水引に魅力を感じました。自分と贈る相手の関係性に応じ、“想い”をこめて結ぶ、その奥ゆかしくも真心のこもったコミュニケーションのあり方に惹かれました。

水引はただの工業製品でもなければ、ラッピング用品でもありません。作法と伝承を持って今まで続いてきました。完成形を目にすることが多いですが、結ばれる過程の曲線美もぜひ知っていただきたいです。

水引には歴史があり、作法があり、いわれがあります。その魅力を読む人に知って欲しい。そして、これからも生活とともに未来へともに歩むものだということを伝えられたらと思い制作しました。

作品一覧