武蔵野美術大学
柬伝新聞
猿山 美幸 / 視覚伝達デザイン学科
大学3年の秋にカンボジア内戦の虐殺跡地を巡る一人旅に出た。前年、アンコール遺跡群を訪れた際に、この国の持つ影の部分が気になっていた。カンボジアの遺跡は今まで訪れたどんな場所よりも美しく魅力的だった。だからこそ、足の無い人が演奏をしていたり、老人が少なかったり、今も残る内戦の傷跡が際立った。何がそうさせたのか。とにかく知りたいと思った。
旅では元S21収容所とキリングフィールドを訪れた。とにかく涙が流れ、動悸は激しくなった。言葉に言い表せない始めての感情。目が逸らせない。ここで亡くなった方々の最後の声を聞きたかった。偶然にも、S21の生存者であるチュン・メイさんにお話を伺うことが出来た。「ここでみたこと、感じたことを日本に帰って伝えてほしい」。この言葉が私に出来る全てだと思った。
この体験を元に、内戦を今に伝える新聞を制作した。全ては知ることから始まる。知らないことは怖い。過去を知ることは未来を創ることにきっと繋がる。同じ歴史を繰り返さないことが、彼らを弔うことに繋がるはずだ。
憎しみあうことからは何も生まれないことを感じてほしい。
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