急速な経済発展や都市化が進む内モンゴルでは、モンゴル民族の生活が遊牧型から定住型に変わり、それに伴い生活習慣や様式も著しく変化し、伝統文化は失われつつあります。自然と共生することを前提としたモンゴル文化の意識を高め、内モンゴルの草原植生に育まれた風土の中で長年継承されてきた伝統を伝える仕組みを作ることが本研究の主な目的です。

“ツェゲー”とは、モンゴル語で馬乳酒の意味を表す、2000年以上の歴史のある伝統的な飲み物です。ツェゲーは馬の乳を絞り撹拌・発酵して作られ、子供から大人まで飲用する薬用酒として親しまれていました。現在の内モンゴルでは、一般家庭ではほとんど見られなくなっています。

今回の研究では、ツェゲーを伝える施設を提案します。施設において製造工程や飲み方の風習を体験してもらうことで、内モンゴル地域の人々及び観光客にその文化を伝えていきます。また、体験施設周囲には町並みの中に草原の一部を再現する事で、来訪者に内モンゴルの雰囲気を感じて貰えるようにしました。

今回の提案が、ツェゲーを通じて、モンゴル文化の保存と継承に繋がることを期待します。