名古屋造形大学
せんい町ミュージアム
長谷川成美 / 造形学部 造形学科 建築・インテリアデザインコース
彼女の卒業制作『せんい町ミュージアム』は愛知県一宮市にある「せんい団地」の再生を主題としている。この「せんい団地」は70年代の繊維業の繁栄を背景に整備された繊維卸団地であり、繊維業の衰退とともに現在は往時の活気を失っている。この計画では、このエリアに点在する空き地となった街区や空き家となった建物を再利用し、繊維の産業や技術に関する展示施設と、市民の制作活動や交流活動を促すことを目的とするアトリエ、ギャラリー、カフェなどの施設が提案されている。
配置計画においてはこれらの施設を繋ぐネットワークや町歩きのルートが同時に考案され、それらを纏める中心的な役割を担うセンターが計画されている。人々を施設や活動へと自然に導く意図から、この計画案では街区に点在する施設を屋根やデッキにより繋ぐ設計がなされている。
繊維の町からベットタウンへと変化する一宮の街に、繊維とともに歩んだ都市の歴史を残し、小規模な再生改修を積み重ねて人々の活動を導き出し、緩やかな地域の回復を試みる彼女の考え方は大変興味深い。都市の歴史的背景に着目した人間的な提案と設計、抑制が効いた表現、知的な積み重ねに優れた力量が感じられた。今日的な主題に対して穏やかさを持って答えようした彼女の姿勢と提案が高く評価された。 今後のますますの活躍が期待されます。