女子美術大学
てがみや
海原 仁美 / 芸術学部絵画学科洋画専攻
てがみや はその名の通り、手紙ばかりを取り扱う書店です。店舗は百味箪笥が一棹、手紙を集め、運び、売る事を目的に作られました。私は学部4年の制作にあたって、“卒業制作”を作りたくありませんでした。
制作を“卒業の記念”とも“作家としてのチャンスづくり”ともしたくありませんでした。学生生活の集大成としての卒業制作は、どうしても大掛かりなものになり、卒業後大きなアトリエを持てる環境を作ることができなけれ思い出と一緒にゴミ箱へ、ということも少なくありません。私は大学院に進学をしませんし、今後作家としての活動が約束されている訳でもありません。それでも細々とでも表現を続けていくため、物ではなく自分のひと側面を作ろう、そうしてできたのがこの てがみや です。“郵便では出せない手紙を百味箪笥で運ぶ”、このテーマの為に取り付けた車輪でしたが、思えば制作環境が約束された大学を離れる私と、一緒に連れて行きたいという気持ちがあったように思います。
人との関わりの変化とともにあるこの作品の完成がどこのあるのかは、今の時点で目処がたっておりません。
誰かの役に立ったと実感が持てるまで、私が死ぬまで、それとも手紙が本当にこの世から消え、商品が本当の骨董になるまでかもしれません。終わりがあるけれども終わりがない、文通のようなものであって欲しい、そう考えています。