女子美術大学

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この“ふく”とまれ

この“ふく”とまれ

熊崎 江梨香 / 大学院美術研究科デザイン専攻ファッション造形研究領域

会話が社会を形成していると私は考えている。「そのふくかわいいね。」そんな一言から社会は形成されているのだ。

衣服はどんな時でも、人と共にあるものである。そんな衣服には、様々な役割があり、身体を守る、寒さを防ぐなどの機能性だけでなく、個人のアイデンティティを支える大きな役割を持っている。好きな服を着て、オシャレを楽しみ様々な人と会話することは、日々の生活を楽しくさせるだけでなく、社会性を確立することにもなる。

介護体験に行き、施設の利用者の方達が体にあっていない服を着ているのがとても気になった。身体に障害がある人も、高齢者もみんな自分の社会を形成している。行動範囲が狭くても、自分から会話をすれば社会は広がる。メインターゲットを高齢者にし、4つの施設に伺い、対象者の方、介護士・看護士の方と共に衣服をデザインし制作する。このインクルーシブ手法を用いることで、対象者の方がより明るくなり、社会と積極的に結びついていけるようになればと考えた。対象者の方には着用しやすいかや自分の好みに合っているかどうかなどの意見をもらい、介護士・看護師の方には、着脱の介助の際により便利になるようにデザインした。

このプログラムに参加することによりどれだけ認知機能、うつ傾向、主観的健康に変化があるかについても事前調査と事後調査から測定した。認知機能については大きな変化はありませんでしたが、良くなる傾向は見られました。うつ傾向を示す点数が低くなりうつ傾向は弱くなりました。(有意差0,05)主観的健康は「とても健康である」「まあ健康である」方が増えました。数値として得られた評価はこれからの超高齢化社会に貢献することが出来ると考える。

自分で意見を出した服を身にまとえば、必ずそこから会話が生まれ、少しずつ社会と結ばれていく。

服を中心に人が集まる。人が集まれば会話が生まれる。会話の中心はいつもこの“ふく”。

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