岡山県立大学
岡山県立大学デザイン学部デザイン学研究科 卒業・修了制作展2016
浄化する島 うさぎが棲むクリーンセンター
- 瀬尾 晃二
- デザイン学部 デザイン工学科 建築デザインコース
大久野島は軍事のために支配された歴史を持つ場所であり、戦争で使われた化学兵器製造の実態を今に伝える戦争遺産がある。現在大久野島には住民はおらず、多くの観光客が訪れるリゾート地となっている一方で、その賑わいの外にある戦争遺産は戦後70 年が経過し、海の風を受け、大久野島の厳しい自然環境のために躯体に使われているコンクリートの寿命が迫っている。また、野生のうさぎが生息する島でもあり、そのうさぎが観光資源のひとつとして大きな役割を果たしている。しかし、外来種であるうさぎの増加によってこの島に与える影響も同時に考える必要がある。
この大久野島にクリーンセンターを設計する。住民が居ないこの島ではクリーンセンターが開かれた施設となる。島の回遊性を向上させ観光客の行動範囲を広げることで、点在する戦争遺産に訪れる機会を増やし、また島自体の魅力を再発見できるだろう。
クリーンセンター全体を覆う格子に大久野島の自然が時間とともに浸透し、そこへうさぎが住処をつくる。その中に、クリーンセンターからでる余熱を利用した温泉を設ける。このクリーンセンターから立ち上がる蒸気と温泉に立ち籠める湯気が化学兵器を製造していた大久野島の賑やかな時代を想起させるだろう。
また、クリーンセンターの寿命は短く、解体されたあとは戦争遺産を守る箱となり、うさぎの住処となっている格子は廃墟と化す。