名古屋造形大学
第24回名古屋造形大学卒展 第13回大学院修了展造形研究科
千種駅周辺計画
- 前田 霞
- 造形学部造形学科 建築デザイン
本作品は、作者の通学時の日常的な視線から、まず街の風景の不思議さに着目している。作者は、サーベイを重ねるうちに都市の中の「地形」にたどり着いた。それから都市の地形を読み解き、都市に新しい関係性と空間を提案した作品である。とても自然な流れで着目から回答に展開しているように見えるが、卒業制作はそんなに簡単であってくれない。そこを作者の地道で不断の努力が、明快な回答を生み出している。作品は土木的とも言える土台作りから始まっている。「土木」と「建築」をどう関係付けるかは、最近の卒業制作(設計)で時たま見かけるようになって来た。これは311 の東北大震災以後、「防潮堤」や「かさ上げ」など街を復興するに土木的な工程と建築的な工程が極めて近い関係で検討されるのを目の当たりするようになったことも大きな原因かもしれない。作者は対象の地域をこまめに歩き、都市の歴史を調べ、都市の地図を見比べ、地層を調べ、地域の歴史を読み込んでいった。東西の高低差が7m ある地形をどのように利用していくかが要点であるが、低い部分に鉄道が走っている。高低差と線路が街を東西に分断している。その線路上に31m までの高さで建築物が建てられ、二方向地中梁無しで可能という構造設計標準を作者は探し出して、新しい空間を線路上に想定するに至った。地道な現地サーベイは、作者に、未来この計画地に必要になるであろう都市施設の具体的イメージを喚起させた。この作品は、将来、自立した設計者となる期待を沸かせるに十分な作品である。