卒展レポート

武蔵野美術大学

平成27年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作展

  • 交差・反復
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交差・反復

井口 広大
大学院 造形研究科 美術専攻 日本画コース

従来の日本画に好まれる傾向にある、手で描かれた有機的な曲線。それに対して、嫌われる傾向にある、図面を引くように描かれた無機的な直線。曲線を直線で抑圧し、画面全体を落ち着いた色調にすることで、動的な要素を一切感じさせない絵画にすることを目指し、自分なりに新しい日本画表現を追求しました。
また、日本美術の特徴である外部との連続性という要素も意識しています。背景の青い格子状の構造体が左右非対称である理由は、この絵画空間が画面内だけで完結するものではなく、画面の外にも続いているという感覚を鑑賞者に与えたいと考えた結果です。
この絵を構成している形体は、一般的には表現するに値しないと思われる、現代の都市景観にありふれた要素から着想を得ています。取材旅行などに行くと、誰にでも喜ばれそうな素晴らしいモチーフをたくさん得て描きたくなってしまいますが、一歩引いた位置から概観し、あえてこのように価値の無いものを魅力的に表現することも、絵画を制作するひとつの原動力になると感じています。

作品一覧