東北工業大学
東北工業大学ライフデザイン学部クリエイティブデザイン学科の第1期生となる今期4年生の卒業制作展が、2月17日から22日まで「せんだいメディアテーク」で行われた。
今年度の卒業研修は、1年前の東日本大震災の影響を無視して語ることはできない。地震の瞬間から避難、その後の不自由な生活まで、学生自身の実際の体験をもとに、さまざまな切り口から災害対策にデザインを応用しようという提案が示された。災害時の安全確保のため、あるいは避難所生活の不便さを軽減するための道具・サービスといった真正面からの取り組み。しばらく続いた電気やガスが途絶えた中での生活という経験から、省エネルギー・持続可能社会のためのデザインのあり方を追求した提案。さらに、災害で人々が受けた心の傷をデザインで癒したい、という思いの込められた作品もあった。地域貢献などの公共性の高い視点からのモノ・システムの提案は、従来の卒業研修でもテーマとしてたびたび取り上げられてきたが、震災を経験した今回の卒業制作展には、より多くの学生が、より深くこのテーマに取り組んだ結果が表れていた。
このほかにも、本学科の特徴である、幅広いデザイン領域をカバーする教育を反映し、さまざまな方向性の作品―素材や技法の追求と感性の表現に重点を置いたアート作品から、コンピュータを活用したインタラクティブ・アニメーションやCGなどのビジュアル表現、個々人のニーズを出発点にしたリアリティのある実用グッズの提案などが展示された。全体的に、「クリエイティブデザイン学科第1期生」の自覚を感じさせる、質の高い展示内容であった。
■大学情報
社会と協創する東北工業大学クリエイティブデザイン学科は、2008年に工学部デザイン工学科を発展的に改組・新設したライフデザイン学部の中に設置された。プロダクトデザイン、ビジュアルデザイン、エクスペリエンスデザインの3つのコースで構成されている。本年度が、初めての卒業生となった。クリエイティブデザイン学科では、伝統を踏まえつつ、変化する社会の要求に応えることのできる人材を育成するための新しい取り組みを行ってきた。今、震災や事故への対策、高齢化の進む社会への対応、有限な資源の有効活用など、取り組むべき課題は山積している。適切なデザインは社会を豊かにできるという考えのもと、一方的な創造ではなく社会の人々とのコラボレーションによって生み出すことに重要性を感じている。
【ライフデザイン学部】
■クリエイティブデザイン学科
・プロダクトデザインコース:家電製品、自動車、家具などの、美しく快適な生活を支える道具をデザイン。
・ビジュアルデザインコース:広告・宣伝、編集、パッケージ、CGなどの、効果的で美しい情報伝達のデザイン。
・エクスペリエンスデザインコース:Webデザイン、アプリケーションデザインなどの、ユーザーの快適で効率的な生活を形づくるデザイン。
■安全安心生活デザイン学科
■経営コミュニケーション学科
【大学院 工学研究科】
■デザイン工学専攻(博士課程前期・後期)
・産業デザイン計画部門
・環境造形計画部門
・福祉デザイン計画部門
・生活デザイン科学部門
東北工業大学ライフデザイン学部 クリエイティブデザイン学科 卒業制作展
会期:2012年2月17日(金)~22日(水)
会場:せんだいメディアテーク5F(宮城県仙台市青葉区春日町2-1)