次代を担う1,100の金の卵が、広大なキャンパスに集結。
2011年1月20日~23日の三日間、鷹の台キャンパスを会場に「武蔵野美術大学 卒業・修了制作展」が開催されました。大学院2専攻、造形学部11学科およそ1,100点が出揃いました。幅広いジャンルのデザイン・アートを圧倒的な作品数で楽しめることも、武蔵野美術大学ならではです。今回はいくつかの作品に絞って、若き才能の魅力をお伝えします。
武蔵野美術大学の特徴として、屋外の敷地を活かした大型作品が多く見られる点があります。ひときわ注目を集めていたのが、7号館前の芝生に出現したツリーハウス。空間演出デザイン学科 高田 賀奈絵さんの作品です。子供の頃に誰もが憧れた秘密基地を、学生生活の集大成として実現しました。木の幹に沿った階段を登り扉を開くと、星を眺めるための望遠鏡や月がモチーフになったオブジェが出迎え、好奇心をかきたてる空間が広がります。絵本に出てくるような空想的なビジュアルですが、人の重みにも耐えられる構造になっています。一日の大半を過ごす職場(学校)でも家でもなく、自分だけの第三の場所“サードプレイス”とも思える空間が、屋外作品で多く見られました。
ここ数年、建築学科の作品では「環境問題」を解決する建築提案が多数を占めていました。今年はその傾向は薄れ、変わって“都市と建築の関係性”を題材とした作品が目立ちました。伊達 静香さん・野田 あづささんの「まちなみ」や平川 慧亮さんの「浮上大地」、鳥巣 峻史さんの「森で食らす」では、条例や社会情勢などの要因から、都市を形成するはずの建築が単なる「箱」になっている点を指摘しています。三作品の根底にある「都市と建築の関係性の希薄化」という問題意識は同様です。しかし建築プランは全く異なるアプローチでユニークな提案となっており、建築が持つ可能性の広さを感じさせる作品でした。
視覚伝達デザイン学科では、ペーパーバックの歴史とデザインに注目した細野 由季恵さんの作品が印象に残りました。自身が収集した1935~80年代のペーパーバックの魅力を、3つの切り口で伝えています。眠っている価値を掘り起こし、デザインの力でその魅力を伝えていくことは、情報過多の現代において重要な役割です。作品のクオリティ、資料的価値も非常に高い作品でした。
全体の傾向として、“自己を見つめた作品”、“社会との関係性を表現した作品”、“概念を噛み砕き再解釈した作品”に、大きく分類できると考えます。ここでは、それらの作品から35点をピックアップし、ご紹介いたします。
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