第一線で活躍するデザイナーから、“生きたデザイン”を学ぶ。
桑沢デザイン研究所は、日本初のデザインを冠した学校として1954年に設立されました。2008年には、インテリアデザイナーとして初めて紫綬褒章を授与された内田繁氏が、学長に就任しています。“デザインは何のためにあるのか?人間とは何か”と広義な目線でデザインを学ぶ校風は、創立者である桑澤洋子氏の理念を受け継いでいます。キャンパスは、渋谷と原宿の間という好立地に位置し、日本のデザインの最先端を日常的に感じとれる環境です。そのアクセスの良さもあり、2011年2月25日(金)~27日(日)に開催された「平成22年度卒業生作品展 KUWASAWA 2011」は、大きな賑わいを見せていました。
「KUWASAWA 2011」は、総合デザイン科[ 昼間部 ] 13ゼミの作品、デザイン専攻科[ 夜間部 ] 4コースの選択された最終課題作品、基礎造形専攻 [ 付帯教育 ] の作品発表の場です。展示の特徴として特筆すべきは、ゼミごとの展示を行う点(総合デザイン科のみ)。他校では、学生個人でテーマを設けて制作しますが、桑沢デザイン研究所はゼミごとにテーマを設定し、そのテーマに沿った作品を発表しています。テーマが一つの方向性を指し示し、各作品が持つ着眼点の違いも明確になります。一つのテーマに対する多様なデザインアプローチを楽しむことが出来ました。
ゼミの講師陣は、デザイン界の第一線で活躍するデザイナーの方々です。講師自身が常にデザインに挑み続けているからこそ、学生の作品からは“生きたデザイン”が感じとれます。
【総合デザイン科(昼間部)3年 ゼミナール一覧】
■ビジュアルデザイン専攻(VD) : 浅葉 克己 / 大島 洋 / 川俣 忠久 / 北川 一成 / 高橋 敏 / 唐仁原 教久 / 八十島 博明
■プロダクトデザイン専攻(PD) : 金子 富廣 / 渡辺 弘明
■スペースデザイン専攻(SD) : 内田 繁 / 藤原 敬介
■ファッションデザイン専攻(FD) : 眞田 岳彦 / 藤田 恭一 (敬称略・五十音順)
VDの北川一成ゼミでは「ゆらぎ_感性と概念のはざま」をテーマに作品を制作しました。「GRAPH」のヘッドデザイナーとして、印刷技術を融合した独自のデザインが注目されている北川氏は、北川ゼミのテーマを以下のように設定していました。
「最近は概念で理解しようとする、いわば「わかる」ことにかたよった情報であふれています。「わかる」と「できる」はちがうのです。それらはどちらも必要です。わかってもできないのです。「できる」には身体を通して得られる経験や、研ぎすまされた感性を源にした理解も必要だと考えます。それら感性(直感)と概念(理論)のはざまでさまよう人間の「ゆらぎ」にこそ“創造の源泉”があると考えます。」
北川ゼミの展示からは、この考え方を感じ取れる作品が多く見られました。例えば幸野茜さんの「Re:cover」は、お菓子の包み紙を再利用したパッケージの提案です。「再利用」をテーマにする作品の多くは、理論が先行して奇をてらったものになりがちです。幸野さんの作品は特段に珍しいアイデアではありませんが、一枚の絵を描くように様々な色柄の「包み紙」を繋ぎ合わせ、見る人の目を楽しませるファンシーなパッケージに仕上がっています。
“再利用は環境に良い”。その事実は、誰しもが理解しています。しかし、“再利用のものを使おう”と常に意識が向く人はどの程度いるのでしょうか。「再利用」の言葉が意味を持たないほどに、モノ自体に魅力を持たせることが必要なのかもしれません。環境への理解を、社会に通用するモノに具現化した「Re:cover」は、北川氏が伝えた「“わかる”と“できる”」の好例と言えます。
また1Fのスペースでは、藤田恭一ゼミと、デザイン専攻科2年によるファッションショーが行われました。桑沢デザイン研究所のファッションショーは、毎年立ち見が出るほどの盛況ぶりで、卒業制作展に華を添えています。
ここでは、「総合デザイン科」「デザイン専攻科」から27作品、そしてファッションショーの模様をご紹介します。
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