ひとつ上のポートフォリオ作りFAQ

ポートフォリオの作り方 – 実践編

Advanced 実践編
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ひとつ上のポートフォリオ作りFAQ

ポートフォリオの見せ方や構成は、クリエイターによって大きく異なります。ただ、コンセプトを伝えるコツや相手に強い印象を与えるセオリーには共通項も。ひとつ上のポートフォリオに仕上げるポイントを、Q&A形式でまとめてみましょう。

Q ポートフォリオは、縦位置と横位置のどちらが適していますか?

どちらでもかまいません。あなたが作りたいポートフォリオの企画に合わせて決めてください。また、あなたの作品は縦位置が多いのか、横位置が多いのかも重要なポイントです。市販のクリアファイルバインダーはデザインやサイズの種類も圧倒的に縦位置のものが多く、横位置のクリアファイルバインダーは種類が少ない傾向があります。

しかし、市販のクリアファイルバインダーに縦位置が多いからといって、それにとらわれることはありません。ゼロから考えて、あなたのポートフォリオの企画にもっともふさわしいものを選んでください。また、市販のもので求めているものがなければ、自分で作るくらいの気概がクリエイターには必要です。

Q 右開きと左開きは、どちらがいいのでしょうか?

雑誌の場合、左開きは横書き、右開きは縦書きのレイアウトになります。ポートフォリオに関しては、作品掲載ページ内の要素から考えると、左開きが適しています。もちろん、企画によっては右開きのものもあるので、自分の企画に合った方を選びましょう。

Q ポートフォリオのサイズは大きいほうがいいのでしょうか?

ポートフォリオ作りをサイズから考えるのは止めましょう。大切なのは以下の2点です。

1. 自分の作品を紹介するのに、その大きさは適切か
2. プレゼンテーションするときにその大きさは適切か

たとえば「携帯性が良いから」という理由だけでサイズを決めてはいけません。どんなに持ち運びに便利でも、小さくて見にくくなってしまっては本末転倒です。作品がきちんと評価してもらえるサイズかどうかで決めましょう。

Q 装丁デザインに凝っているポートフォリオを見かけますが、クリアファイルでは就活に不利ですか?

まずは中身のことを考えましょう。収録作品のレベルが高く、ポートフォリオの企画・構成を通してあなた自身の考え方や姿勢がきちんと表現されていれば、クリアファイルでも大きな影響はありません。反対に、収録作品やポートフォリオの企画・構成がよくなければ、どんなに凝った装丁デザインにしたところで「着飾っただけ」のことになり、取り立てて良い評価を得ることはないでしょう。評価は、中身が基本です。まずは収録作品を充実させ、余裕があったら凝った装丁デザインに挑戦しましょう。

Q リングバインダーはいろんな種類があります。リングの数は多いほうが良いのでしょうか?

リングバインダーには2穴、4穴、30穴など、たくさんの種類があります。選ぶポイントは、穴の数よりそのリングの直径の大きさが重要です。というのも、ページ数が多いポートフォリオの場合、直径数が少ないと収録しきれない、あるいはページがめくれない……なんてことになるかもしれません。

一般に、穴数の多いリングバインダーは、リングの直径が小さい傾向にあります。企画したポートフォリオのページ数に対応できる直径のサイズより、少し大きめのリングのバインダーを選ぶようにしておきましょう。もしページを追加したくなっても、スムーズに対応できるはずです。

Q 送付用や保存用として、サブポートフォリオを作ったほうが良いのでしょうか?

メインのポートフォリオを送付すると、手元にポートフォリオがなくなってしまうので、就職活動を効率よく行えなくなってしまいます。そういう意味では、相手に渡せる小冊子型のサブポートフォリオは作っておきたいところです。

サブポートフォリオ作りのコツは、メインのポートフォリオの企画をそのまま活かした縮小版(たとえばA4サイズ)にすること。メインのポートフォリオをA3縦位置40ページ、クリアファイルバインダーで作っているなら、そのままA4縦位置に縮小して閉じれば、比較的簡単に作ることができます。

特別な製本の場合は、A4サイズのクリアファイルバインダーを活用して簡易版を作ってみましょう。中表紙に本物のポートフォリオの表紙写真を入れるなど、メインの企画・構成を生かした形にすれば、サブポートフォリオとしての役割は十分果たせるはずです。

Q ポートフォリオの作品の背景色で悩んでいます。白または黒にするのか、統一したカラーを使えばいいのか、あるいはページによって変えるべきか。あと、模様の入った背景なども考えられます。どれがよいのでしょうか?

作品掲載ページの背景色は、白の無地が便利です。なぜなら、いろんなタイプの作品を載せることを考えると、バックが白の無地であるほうがどんな作品でも主役にしやすいからです。

黒の無地バックは使い方に注意しましょう。黒バックは、載せる作品によっては作品よりもバックの印象が強くなります。写真家のポートフォリオでは黒バックにしているものが多いですが、それはページ内に載せる要素が写真作品と作品タイトルくらいで、作品の企画意図や作品仕様など複雑な要素をあまり入れないからです。

ただし、便利だからといって白バックにこだわる必要はありません。自分の作品を効果的に引き立たせるのであれば、複雑な色やデザインのバックも積極的に使用してください。

Q ポートフォリオの見せ方で、もっとも注意を払うべき点は何でしょうか? こういうことは避けましょう! というのがありましたら、教えてください。

作品ページを見た時に、何よりも作品が一番目立っていることが大事です。作品よりも目立つ太い罫線や、ページのタイトルまわりの強すぎるデザインなどは避けましょう。ポートフォリオでは、主張しすぎる太い囲み線やタイトルまわりのデザインは、作品を集中してみせる妨げにもなります。あくまで作品ページにおいては、作品が主役ということを念頭に置いてください。

さらに、長い就職活動期間においては、ポートフォリオが雨で濡れてしまったり、汚れてしまうこともあります。そんな時のためにポートフォリオを数冊用意したり、すぐ補修できるようにプリントアウトの予備や装丁部品の予備を用意しておくなどの準備をしておきましょう。

Q ポートフォリオの収録作品は、やはり自主作品の比率を多めにした方が良いのでしょうか?

企画ありきで考えましょう。あなたの企画したポートフォリオが、学校の課題作品のみで十分に構成できるのであれば、自主作品は必要ありません。しかし、課題作品が過去の作品だけでは、あなたの企画を実現できないということであれば、新たに志望に合わせた作品を作る必要があります。

一方、自分のスキルを最大限にアピールするなら、自主作品を多めに入れることも大切です。そもそも、学校の課題作品の多くは、技術を学ぶ機会に生まれた副産物。課題制作で学んだことも生かした作品として、多めにポートフォリオに収録する人は少なくありません。

Q 収録されている作品点数は多いほうが良いのでしょうか?

素晴らしい短編映画を見た時も、素晴らしい長編映画を見た時も、感動の価値は変わりません。ポートフォリオも同じです。作品点数は問題ではありません。

作品点数を抑えて、ひとつひとつ丁寧に解説するものもあれば、とにかくたくさんの作品を収録し、ボリュームをアピールする物もあります。大切なことは、ポートフォリオを通して相手に何を伝えたいのかはっきりさせることです。

なお、ほとんどの人にとって、勉強を始めたばかりの1年生の時の作品は、余りレベルが高くないのが一般的です。明らかにレベルが高くない作品をポートフォリオに載せることは避けたほうがいいでしょう。あなたが考えたポートフォリオの企画にその課題作品が必要なのであれば、再度同じ課題に取り組み、自主作品としてレベルを上げた作品を載せましょう。

Q デザイン業界で目指す方向性がまだ定まっていません。ポートフォリオ作りは、目指す方向によってどうかわるのでしょうか?

定まっていた方が、より焦点を絞って自分をアピールできます。例えば、広告制作会社に持っていくポートフォリオに、広告作品が1点、パッケージの作品が4点、ロゴマークが4点。これでは、ポートフォリオを見た担当者は、「この人は本当に広告をやりたいと思っているのだろうか」と疑ってしまいます。焦点が絞られていると、その分野の自主作品を増やすなど、ポートフォリオの組み立てを工夫できます。

目指す業界での方向性が決まっていない人は、まず「自分」「作品」「将来」と向き合ってテーマを決めましょう。それを軸にポートフォリオ作りを始めてください。また、ポートフォリオの企画やデザインについては、業界ごとに評価するポイントが異なります。グラフィック系の会社はグラフィック作品、エディトリアル系は編集作品、空調系は空間作品、プロダクト系は製品デザインの作品として評価するでしょう。広告業界は全体のデザイン評価もしますが、アイデアファーストの観点から評価する会社も多いようです。

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