金沢美術工芸大学
金沢美術工芸大学の卒業・修了制作展が、今年も金沢21世紀美術館を会場に開催されました。会場のレイアウトは学生主体で行い、それぞれの作品が効果的に演出されていました。デザイン科の各専攻では教育方針に沿った多様なテーマ設定や表現が求められますが、数度の学内審査でそれらが研ぎすまされ、提案性の高いものに仕上がっていきます。特に現代社会や時代性を意識したコミュニケーション・製品・空間に対する新しい価値の創造を目指した、チャレンジ精神溢れる作品が多く見受けられました。展示は専攻ごとに緻密に計画され、作品をジャンルごとにまとめたり、使用方法を説明するムービー、ライティング効果など来場者に伝える工夫が感じられました。学生のギャラリートークツアーや外部審査員による特別賞の選考も実施され、活気に満ちた展覧会となっていました。
●視覚デザイン 学部20名 大学院2名
今回もバラエティー豊かな作品が揃いました。映像作品はもとより、立体作品が多い傾向はこれまでもありましたが、レーザー加工やインタラクティブ性を含む作品も見られ、ますます「視覚デザイン=平面」という概念は薄れております。学生たちは見て感じること、コミュニケーションすることをとても大事に作品を制作しています。何かを伝えたい、世の中をちょっと変えたいという気持ちが、これらの作品たちを生み出しているのです。クリエイティブのパワーで時代を切り開こうとしている学生たちの表現をどうぞお楽しみください。
●製品デザイン 学部21名 大学院3名
製品デザインの卒業制作の魅力は、時代の課題を反映した密度の濃いモデルにあるといえるでしょう。それは1/1が基本となっており、それぞれのモデルはユーザーの現場で検証をおこない改良を重ね、たどり着いた裏付けのある結果です。学生たちは現場に足を運び人々と関わる中で様々な現実に触れ、問題に直面し、実証モデルによる試行錯誤の中から得られた手がかりを積み上げ、形にします。イノベーションとは、そのようなリアリティの中から生まれると各々は体験的に理解しています。今年度、学生たちは自ら世界の卒業制作、社会の動向を調査し、全体テーマを「REAL」としました。自らのものづくりの姿勢を表明すると共に、それはユーザーリアリティ・プロダクトリアリティ・マーケットリアリティへ向けての妥協の無い探究を表しています。
●環境デザイン 学部21名
環境デザインのフィールドに境界線は存在しません。空間に関わる専門的な知識や技術を基礎に、各自が様々な領域でデザインよる課題解決にチャレンジしています。現在から未来を見据えたものまで幅広くそれぞれ魅力的な作品が揃いました。表現方法もスケールモデルやリアルモデルの枠にとどまらず、実際に体感できる空間装置やマテリアルのサンプルまで多種多様です。本年度は展示に関しても従来とは一線を画す表現がなされました。意義ある魅力的な提案も、先ずは目を留めて見てもらうことが重要との視点から、伝えることにこだわった展示空間を目指しました。
●ファッションデザインコース 大学院2名
ファッションデザイン(FD)コース修了制作の特徴は、ブランド構築(自身のブランドを立ち上げる)を想定し 市場調査を行い、多角的視野でターゲットを絞り込み制作する点です。さらに、発表形態を店舗やブランド哲学を伝える空間全体として表現します。
これは、同大学環境デザイン(IAD)学部2年生との共同授業を行う事で実現させています。クライアント(FD修士2年)と依頼を請け負うデザイナー(IAD学部2年)といった関係性のもと、各々の意向を伝えた上で、それらの店舗や什器のデザイン・設計・設置までを実際に行なっています。
今年度は、「AKANE -「折り」のプロセスから生まれる形 -」「ロリータファッションへの新たな提案」と各々対極のテーマに取り組みました。0からファッションを学び、マーケティング・ブランディング・ディレクティングまで果敢に取り組んだ2年間の成果がここに集約されました。