金沢美術工芸大学
金沢美術工芸大学の卒業・修了制作展が、今年も金沢21世紀美術館を会場に開催されました。会場のレイアウトは学生主体で行い、それぞれの作品が効果的に演出されていました。デザイン科の各専攻では教育方針に沿った多様なテーマ設定や表現が求められますが、数度の学内審査でそれらが研ぎすまされ、提案性の高いものに仕上がっていきます。特に現代社会や時代性を意識したコミュニケーション・製品・空間に対する新しい価値の創造を目指した、チャレンジ精神溢れる作品が多く見受けられました。展示は専攻ごとに緻密に計画され、作品をジャンルごとにまとめたり、使用方法を説明するムービー、ライティング効果など来場者に伝える工夫が感じられました。学生のギャラリートークツアーや外部審査員による特別賞の選考も実施され、活気に満ちた展覧会となっていました。
●視覚デザイン 学部16名
視覚デザイン専攻の卒業制作はデザイン科っぽくないと言われることがあります。たしかに、大福餅、交通標識やプラモデル…、といった課題の延長線上にあるとは思えない自由気ままな作品が多く、一見すると遊んでいるように見えるかもしれません。しかし、私たちは見て感じること、コミュニケーションすることをとても大事にして作品を制作しています。何かを伝えたい、世の中をちょっと変えたいという気持ちが、こんな奇想天外な作品たちを生み出しているのです。なんだか暗い世の中ですが、クリエイティブのパワーでそんな時代を切り開こうとしている学生たちの表現をお楽しみください。
●製品デザイン 学部22名 大学院1名
製品デザインにおける卒業制作の魅力は、イノベーションデザインの提案とそれが反映した密度の濃いモデルを完成させることにあります。今年度は学生たちが自ら世界の卒業制作を調査し、社会の動向を踏まえ、全体テーマを「人の心を動かし、時代の変化を捉え、自分たちも変わる」を意味する「MOVE」としました。高いレベルでのモデル製作に加え、展示計画や作品説明用のカタログも高いレベルに仕上がっていました。それぞれのモデルはユーザーの現場で検証をおこない改良を重ねたもので、裏付けのある作品となっています。マーケットのリアリティーとデザインのリアリティーへ向けて妥協の無い探究が一人一人の学生によってなされました。
●環境デザイン 学部21名、大学院1名
環境デザインは空間に関わる専門的な知識や技術を基礎に、さまざまな領域のデザインに挑戦しています。世界の卒業制作を調査するなかで視野を広げ、自ら気付いた課題に対して、様々なヒューマンスケールや方法で解決を試みています。また、その表現手法もスケールモデルから原寸モデル、実際に中に入って体感できる空間装置やプロジェクションマッピングの活用など多種多様です。この様に課題解決の手段を限定せず、目的に合わせて対応できる柔軟性が本専攻の特徴です。さらに、豊かな自然を有し、歴史と最先端が共存する金沢の恵まれた地域特性によって、これらの活動が支えられています。
●ファッションデザインコース 大学院3名
ファッションデザイン(FD)コース修了制作の特徴は、ブランド構築(自身のブランドを立ち上げる)を想定し 市場調査を行い、多角的視野でターゲットを絞り込み制作する点です。さらに、発表形態を店舗として表現する点です。これは、同大学環境デザイン(IAD)学部2年生との共同授業を行う事で実現させています。クライアント(FD修士2年)と依頼を請け負うデザイナー(IAD学部2年)といった関係性のもと、各々の意向を伝えた上で、それらの店舗や什器のデザイン・設計・設置までを実際に行なっています。今年度は、「レースや刺繍を使ったコンテンポラリージュエリー」「メンズテーラードを基軸とした性差の融合」「機能性を取り入れたアーバントレッキング・ウェア(メンズ)」と、三者三様のテーマに取り組みました。0からファッションを学び、マーケティング・ブランディング・ディレクティングまで果敢に取り組んだ2年間の成果がここに集約されました。
金沢美術工芸大学 卒業制作展
会期:2014年2月21日(金)~3月1日(土)
会場:金沢21世紀美術館 市民ギャラリーほか
URL:http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/www/contents/gallery/h24/sotsu2013/sotsu2013.html