あらゆる分野の大学・専門学校と企業・自治体などが連携して共同開発を進める「産官学連携」の取り組みでは、企業にとって時間を割きにくい「基礎研究」を、知識の宝庫といえる学校と共同で行うことで、社会に役立つ研究成果を生み出している。今までにも数々のアイデアが製品化・実用化され、私たちの身近でもその成果を垣間見ることが出来る。
しかしながら昨今の経済不況で、産学連携の取り組みにも影響が如実に現れている。文部科学省によると、平成21年度の「共同研究件数※1」は14,779件となり、前年度に比べて195件(1%)減少し、「研究費受入額」も約295億円と、過去最高であった前年度に比べて約45億円(13%)の減少だ。また「受託研究件数※2」は6,185件となり、前年度に比べて676件(4%)増加したが、やはり「研究費受入額」は約112億円と、前年度に比べて約1億円(1%)減少している。研究件数、研究費ともに例年に比べて伸び悩む結果となった。
※1:企業等の研究者と大学の教員が共通の課題について研究を行う
※2:外部から委託を受けた研究課題について大学が研究を行い、その結果を委託者に報告する
一方で、明るい変化の兆しも見え始めた。平成21年度のライフサイエンス分野における共同研究件数は、252件(5%)増加した。ライフサイエンスとは、生物学・生化学・医学・心理学・生態学のほか社会科学なども含めて総合的に研究する学問である。日本全体を不安の渦に引きずり込んだ東日本大震災、福島原子力発電所の事故を機に、いま多くの人々が環境問題やエネルギー問題に対して、強い関心を寄せている。今後の「産官学連携」の取り組みでは、よりライフサイエンス分野の研究に注目が集まるだろう。
毎年継続的に産学連携に取り組む金沢美術工芸大学も、太陽光発電システムの開発に際してiPadの教育コンテンツ・デザインを行うなど、社会の変化に敏感に対応した研究成果をあげている。ここでは、それらの取り組みについて詳しく紹介したい。
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